毎日新聞「今日のイチオシ!」  3月13日付朝刊  編集編成局次長・三森輝久

【「奇跡の少年」 重荷の先に】

 東日本大震災の津波で全校児童108人中、74人が犠牲になった宮城県石巻市立大川小学校。あの日、学校にいた子どもたちは先生たちに率いられて学校近くの橋のたもとに歩いて避難中、津波に襲われました。現場にいて助かった子どもは4人。その一人、当時5年生だった只野哲也さん(22)はただ一人報道陣の取材に応じて証言してきました。

 

 しかし「奇跡の少年」と呼ばれるなど思いがけない周囲の反応や、内面の葛藤に苦しみます。取材を断るようになった只野さんは心理カウンセラーや同級生、先輩たちの支えで苦境を乗り越え、そして、被災した大川小校舎の保存に向けて広島を訪ねます。「大川に新しい街をつくる」。古里再生に向けて歩き出した只野さんを、11年前に大川小の惨劇を報道し、その後も取材を続けてきた百武信幸記者がつづりました。(12版から、1、3面)