夏目漱石『坊っちゃん』、太宰治『富嶽百景』、松本清張『ゼロの焦点』、有吉佐和子『紀ノ川』……。日本全国さまざまな土地を舞台にした文学作品が、人びとを魅了してきました。「ご当地文学」として愛され、観光の呼び水になっている作品もたくさんあります。長らく日本の近現代文学を見つめてきた文芸評論家の斎藤美奈子さんが、よく知られた物語やシーンの舞台となった土地に着目し、名作を論じます。原則第1土曜の読書面で、47都道府県別に順不同で紹介します。1回目の本日は静岡編。尾崎紅葉『金色夜叉』に始まり、貫一と宮の物語を現代に甦らせた橋本治の遺作『黄金夜界』で終わります。紙上での日本文学の旅をお楽しみください。