【新シリーズ「そして今」2005年耐震データ偽造 欠陥住宅 苦闘の17年】
2005年に発覚した元1級建築士による耐震データ偽造問題で首都圏45件の完成済みマンションの住民が人生最大の買い物として購入したマイホームから退去や補強を余儀なくされました。世田谷区のマンションでは補強か建て替えかをめぐり住民同士が3年間で200回近い話し合いを重ね建て替えにこぎ着けました。
入居時33歳だった男性は当初のマンション購入と立て替え費用で一時、月23万円ものローンを支払い、住民同士の話し合いや裁判などのために東京を離れる転勤ができず仕事のキャリアアップも諦めるなど大きな犠牲を払いました。
一方で国や検査機関に立て替え費用や慰謝料を求めた裁判は住民の敗訴に終わります。偽造の責任を問われたのは建築士だけで、検査機関や制度の不備は不問に付されました。問題発覚を教訓にした制度整備は進みましたが、同様の不正は後を絶たず、大手企業によるデータ改ざんも次々と発覚しました。
今でも「悔しい」思いは消えませんが、唯一前向きに考えられるのは再建で手に入れた今の住まいのこと。「入居者一人一人が納得して作り上げた。二度としたくないけど、得がたい経験」と振り返ります。
◇
かつて注目を集めた事件や出来事。当事者たちのその後の軌跡と今を追う新シリーズ「そして今」がスタートしました。随時掲載します。