親の看病などを経て、現代社会のありかたに強烈な違和感を覚えるようになった映像作家・中村佑子さんの寄稿です。中村さんは、幼児や病気の家族と向き合うなかで、こんな境地にたどり着きます。この都市と社会は、市場において有用な人間だけの方を向いて設計されている--。そして、生産性を社会の中心に置きすぎていると指摘し、「ケアを真ん中に据えた社会を構築することはできないだろうか」と呼びかけます。抽象論のようで、非常にリアルな体験、自己洞察を織り交ぜた寄稿は、弱い立場の人たちとの向き合い方、社会との向き合い方、ひいては自分との向き合い方をも考えるヒントを与えてくれるように思えます。