【松本サリン事件30年「風化させない」/教え子亡くした医師の思い】
「患者の体温や血圧は高く、脈もあったが、けいれんを起こしていて、目は瞳孔が縮む『縮瞳』を起こしていた。見たことがない、異常な状態だった」。30年前に起きた松本サリン事件で、救急医として搬送されてきた被害者の初期治療に当たった医師(68)はこう振り返ります。
犠牲者8人の中には、知人のほか、3日前に食事をしながら将来の進路を語り合った教え子も含まれていました。そして事件を起こした宗教団体には、医学や化学の専門家がいました。心的外傷後ストレス傷害(PTSD)になり、一時期は事件について語ることもできなくなりましたが、今、後輩たちに呼びかけ続けています。「身に付けた専門知識を正しく使ってほしい」。その思いに耳を傾けました。(社会面)