【「軍神」の責任 背負った息子/大日本青年を追って】
日本から約3000キロ。雪に覆われた険しい山々がそびえる北太平洋の孤島、米国アラスカ州アリューシャン列島のアッツ島で1943年5月、約2600人の日本軍部隊がほぼ全滅しました。1万人超の米軍を相手に玉砕し、「軍神」とたたえられた部隊長の次男は、毎日新聞が戦時中に発行した雑誌「大日本青年」に航空隊に入って戦う決意を寄稿していました。
戦場に赴く前に終戦を迎えた次男のその後を記者が追うと、エンジニアとして働きつつ、数年に一度、アッツ島を訪れ、遺骨調査の先頭に立っていました。父の遺体を見つけた後も島にこだわった「軍神の息子」。遺族はこう語りました。「遺骨を収集できていないことを許せないと言えるのは遺族しかいない。あの戦いの象徴が祖父だったとしたら、父はその役割を引き受けようとしていたのだと思います」(社会面)