毎日新聞・8月20日付朝刊「今日のイチオシ!」 デジタル編集本部長 柳原美砂子

【戦争トラウマ調査へ 厚労省 旧日本兵のカルテ照会】過酷な戦場の現実や加害行為のため、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などに苦しんだ旧日本軍兵士や家族の実態について、厚生労働省は近く、初めての調査を本格化させます。旧陸海軍病院を前身とする国立病院機構などに対し、治療を受けた兵士のカルテなどの資料が残っていないか照会し、協力を求める方針です。厚労省は関係資料などを収集・分析した上で、戦後80年を迎える2025年度に公開、展示します。

 戦争で心を病む兵士がいることは指摘されていましたが、精神の強さを強調する軍は患者の存在を否定。戦後も長らく、当事者や家族は「恥」と考える意識が強く、多くを語りませんでした。市民グループ「PTSDの日本兵家族会・寄り添う市民の会」は、戦争を機に酒に浸り暴力を振るうようになった父を持つ当事者たちが経験を語り合う活動を続け、国に戦争トラウマの実態調査を要望してきました。同会の男性は「今でも戦争が原因で苦しんでいる子ども世代がいる。きちんと調べ、後世に残すことが国の責任だ」と訴えています。(一面、三面)