毎日新聞・9月6日付朝刊「今日のイチオシ!」 編集局次長・堀雅充

【戦地に残した35人の部下 パリから案じるウクライナのパラアスリート】

 「戦争なんかに加わるべきじゃない。でも僕は、大会が終わったら前線に戻る」。パリで開催中のパラリンピック。妻と2人の娘を持つウクライナのシッティングバレーの選手は試合後にこう語りました。

 ドローン操縦の資格を持つ歩兵隊の現役将校で、開会式の10日前まで前線にいたといいます。18歳の時にバルコニーから落ちて腰の骨を折り、左脚が右脚より短くなってしまいました。「シッティングバレーは、いつも自分の最優先事項だった」と振り返ります。そんな日常を変えたのがロシアによる侵攻でした。「優先するものが、シッティングバレーから家族と国を守ることに変わったんだ」

 話を聞いている途中に通訳をしていたウクライナチームの女性スタッフが肩をふるわせました。しばらくして涙をこらえながら続けました。「彼は、『自分には35人の部下がいる。大会を終えて軍に戻ったとき、生きていてくれることを願う』って……」

 国際パラリンピック委員会から、大会中の政治的言動を禁じられている選手たち。制限の中で発せられた言葉に耳を傾けました。(1面、社会面)

※九州・山口は1面のみ。ウェブサイトで全文を見られます。